ラデク・バボラーク

モーツァルト/ホルン協奏曲全集(2016)
CD(SUPRAPHON SU 4207-2)

モーツァルト/ホルン協奏曲全集
1.ホルン五重奏曲変ホ長調K407
2.ホルン協奏曲第1番ニ長調K412&514
3.ホルン協奏曲第2番変ホ長調K417
4.ホルン協奏曲第3番変ホ長調K447
5.ホルン協奏曲第4番変ホ長調K495
  ホルヴァート編(2〜4)
  ミヒャエル・ハイドン編(第3番の第2楽章)
  バボラーク編(5)

  バボラーク・アンサンブル
  ラデク・バボラーク(ホルン)(1〜5)
    (ディートマー・デュルク D3)
  ダリボル・カルヴァイ(ヴァイオリン)(1〜5)
  マルティナ・バチョヴァー(ヴァイオリン)(2〜5)
  カレル・ウンテンミュラー(ヴィオラ)(1〜5)
  ヴィレム・キオンカ(ヴィオラ)(1)
  ハナ・バボラーコヴァー(チェロ)(1〜5)
  シュテパン・クラトホヴィル(コントラバス)(2〜5)
  録音 2016年6月2&3日
       ブレザレン福音教会

 バボラークが室内楽版のモーツァルト/ホルン協奏曲全集を録音しました。これは画期的な録音といえます。LP時代にはピアノ版の全曲録音(ニコラス・ペリーニ)がありましたが、ホルン五重奏曲のように小編成で4つのホルン協奏曲が演奏できたらどんなに楽しいことでしょう。その希望をかなえていたのはウィーンのローラント・ホルバートで、ホルンと弦楽四重奏のために編曲していました。録音にあたっては1番から3番までをホルバートの編曲、4番だけをバボラークが編曲して録音しました。また第3番のロマンスだけはミヒャエル・ハイドンの編曲を使いました。すでにバボラークはこのロマンスを2度録音しています。
 オリジナル曲の「ホルン五重奏曲変ホ長調」は2002年の録音以来で2度目の録音です。バボラークのホルンは相変わらずきれいなホルンでこの作品の素晴らしさを教えてくれます。弦楽四重奏との息もぴったりで流麗な演奏です。第2楽章の美しさは絶品です。張り切る演奏もよくありますがこの演奏は調和のとれた完璧なレガートの演奏です。第3楽章も気持ちよい演奏です。短いカデンツァが挿入されています。
 ホルン協奏曲第1番はコントラバスが入る弦楽五重奏による伴奏です。さわやかな響きでホルン・ソロは力を入れなくてもよく響きますので丁度よいのかもしれません。バボラークのホルンはデュルクのバボラーク・モデルですが大変よく鳴ってくれます。第2楽章はジェスマイヤー版からの編曲です。バボラークはこの1番をバレンボイムとも演奏していましたので、小澤との全集に次いで3度目の録音になります。最後のタッタッタッタ−も同じでした。
 ホルン協奏曲第2番は弦楽に載ったホルンが力強い演奏になっています。この作品を演奏するときにはそうなるようです。第1楽章は少し速めのテンポで演奏しています。それにしてもきれいなホルンです。第2楽章だけはコントラバスが抜けて優しい響きになっています。第3楽章のロンドは軽やかできれいな演奏です。バボラークの2番は小澤/水戸室内、チェコ・シンフォニエッタに次いで3度目の録音です。
 ホルン協奏曲第3番はモーツァルトのホルン協奏曲の代表作ともいえる名曲でメロディの美しさや展開のうまさがひかる名作ですここでも弦楽に載ったホルンが優雅に歌っています。レガートのきれいなホルンです。また弱音の美しさは室内楽ならではのものでしょう。カデンツァはさすがに素晴らしい演奏です。第2楽章:ロマンスはミヒャエル・ハイドンの編曲を演奏していますのでオリジナルとはかなりの違いがあります。バボラークがこの室内楽版を録音するにあたってはこの編曲を演奏するのは当然のことでしょう。ロマンスだけはこれが3度目の録音です。第3楽章:ロンドは速いテンポで軽快な演奏です。ここは強弱をつけて目立つ演奏もしています。最後にアドリブがあります。バボラークの3番は小澤/水戸室内に次ぐ2度目でした。
 ホルン協奏曲第4番はバボラークの編曲で冒頭からソロを加えていて驚きますが、これがバボラークのやりたかったことでしょう。この演奏がまた滑らかで大変美しいソロが流れます。この第1楽章はバボラークの名演奏の連続です。カデンツァは重音も使う長大なもので、2011年の録音と同じです。第2楽章:ロマンスはホルン・ソロと弦楽のみの演奏とが大変美しく、オーケストラ版とは異なる魅力があります。バボラークが室内楽版を演奏したい理由がよくわかります。第3楽章:ロンドは流麗な演奏です。このロンドは何とも言えないホルンの魅力あふれる演奏です。強弱もきちんとつけていながらも最後は静かに終わっています。思わず拍手したくなります。


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