林 伸行

月光/ホルンとピアノのための作品集
CD(WAKO WKCD-0063)

ホルンとピアノのための作品集
1.ダンツィ/ホルン・ソナタ第1番変ホ長調Op28
2.ビュッセル/カントゥコールOp77
3.ダマーズ/子守歌Op19
4.アニシモフ/ポエム(詩曲)
5.クレーベ/変容〜ベートーヴェンのピアノ・ソナタ
  第14番「月光」によるホルンとピアノのための
                    ソナタOp95
  林 伸行(ホルン)
  大谷 祥子(ピアノ)
  録音2012年4月11〜13日
  奈良/河合町立文化会館まほろばホール

 林 伸行のソロ・アルバムです。2007年のシンフォニア・ホルニステンとしての録音以来になります。古典から現代までの作品に挑戦した意欲的なアルバムです。
 ダンツィのホルン・ソナタ第1番はやわらかい音色でロマンティックな演奏です。古典派の作品で多くの録音がありますが林の演奏は独自の世界が感じられホルンの音色の素晴らしさがこの作品の魅力を教えてくれましょう。日本人の演奏家としては野田 篁一に次ぐものです。
 アンリ・ビュッセルの「カントゥコール」はフランスのホルン作品の中でも人気の高い作品ですが、この作品はパリ音楽院の卒業試験の課題曲として作曲されたものです。ピアノパートもよくできておりホルンのテクニックが要求されます。林の演奏はいうことなしの名演です。
 ダマーズの「子守歌」もフランスのホルン作品。このアルバムでは間奏曲としての癒しの音楽になっています。おだやかなホルンが流れます。
 アニシモフの「ポエム(詩曲)」は1961年の作品。旧ソビエトの作曲家によるもので雄大な風景を思わせる主題が朗々と吹かれます。中間部には跳躍的なフレーズがあり後半の叙情的なポエムは思わず聞き入ってしまいます。この作品は日本人演奏家が好んで演奏しており録音も日本人演奏家によって3つの録音がありましたので、これで4種類目になります。
 最後のクレーべの作品「変容」はベートーヴェンの月光ソナタによるホルン・ソナタです。ベートーヴェンのピアノ・ソナタにホルンの主題を載せています。この作品は林が直接クレーべから指導を受け、デトモルト音楽院の卒業試験に演奏したそうですが、その当時を思い起こすと深い読みが足らなかったのかもしれません。17年の歳月はこの作品の素晴らしさを見事に表現してくれました。第3楽章の緊張感は素晴らしく、ベートーヴェンから離れて自由な表現になるとクライマックスになり、そして第1楽章の再現があります。林の録音はバボラークに次ぐもので、彼に比肩する名演です。


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