リュク・ベルジェ

ベートーヴェン/ホルン・ソナタ/シューベルト/流れの上で、他
CD(EXPLICIT! FUG 541)

ヴァルヴ付きホルンの歴史
 1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタ ヘ長調Op17
 2.シューベルト/流れの上でD.943
 3.ライネッケ/オーボエ、ホルンとピアノの
    ための三重奏曲イ短調Op188
 4.シューマン/アダージョとアレグロOp70
 5.ベルジェ/星のお姫様〜ホルン独奏のための

  リュク・ベルジェ(ナチュラル・ホルン)(1)
      〃    (ヴァルヴ付F管ホルン)(2)
      〃   (ヴァルブ付ダブルホルン)(3〜5)
   イヴ・サーレンス(テノール)(2)
   マルセル・ポンセール(オーボエ)(3)
   ヤン・ミヒールス(フォルテピアノ)(1、3&4)
   イング・スピネット(フォルテピアノ)(2)
    録音 2007年7月26〜29日&
         2008年3月15日
     ブリュッセル王立音楽院コンサート・ホール

 リュク・ベルジェはベルギーのホルン奏者です。バウマンに師事しておりナチュラルホルンの名手でもあります。このアルバムでは歴史的なホルンを吹いて録音しておりその音色もまた聞きものです。
  ベートーヴェンのソナタはユングヴィルトのナチュラルホルンをフランスのラウーが複製したものを吹いています。音色は太すぎずナチュラルホルンとしては愛らしい響きです。伴奏のフォルテピアノ(ピアノフォルテ)の可愛らしい響きと相まって18世紀の音楽を感じさせます。ベルジェのホルンは大変巧みでありストップ音はやわらかできれいな音階を出しています。第1楽章は丁寧な演奏、第3楽章も程よいテンポで素晴らしい演奏です。
  注目はシューベルトの「流れの上で」でしょう。1890年製のクルスペのF管ヴァルブホルンを吹いています。シングルホルンだけに難しい楽器でしょう。F管独特の響きでシューベルトを吹いています。ウィンナホルンに近い響きで大変貴重です。ピアノはここでもフォルテピアノです。サーレンスのテノールも素晴らしい演奏です。19世紀のシューベルトを聞くのもまたよいものです。
  ライネッケではクノップのヴァルブ付ダブルホルン(1900年当時のオリジナル)を吹いています。この楽器は現代のものよりは音程は取りにくいのかもしれませんがF管シングルよりも演奏は便利になっているでしょう。演奏を聞いていると全く古い楽器とは感じられません。ピアノは1861年製ということですが重厚な響きが出ていて古いフォルテピアノの響きとの違いがあります。オーボエは古いウィンナオーボエです。トリオの演奏は現代の響きとは若干の違いはありますが、その演奏の緻密なこと緊張感のある演奏は素晴らしいものです。
  シューマンの「アダージョとアレグロ」はライネッケと同じクノップのヴァルブ付ダブルホルンを吹いています。この作品は1849年の作曲ですがこの時にはすでにヴァルブホルンが開発されていましたのでナチュラルホルンのための作品ではなかったようです。ベルジェの演奏はアダージョでは丁寧に歌っていますし、アレグロでは力強さと高度なテクニックで滑らかに吹いています。ピアノとの絡みの素晴らしさも聞きものです。
  最後のホルン独奏作品はベルジェの自作でこちらは現代のアレキサンダー107を吹いています。低音を使わないのでB♭を使うようです。「星のお姫様」には低音はいらないのでしょう。曲はまたきれいなものでホルンの中高域を楽しめる作品です。


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