福川 伸陽

東京六人組/デビュー/フランス音楽作品集
CD(CRYSTON OVCC-00121)

1.プーランク/六重奏曲
2.ルーセル/ディヴェルティスマンOp6
3.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
           (寺嶋陸也編)
4.デュカス/交響詩「魔法使いの弟子」
           (浦壁信二編)
5.フランセ/恋人たちのたそがれ
6.ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
           (磯部周平編)
7.ラヴェル/バレエ音楽「ボレロ」(川島素晴編)

  東京六人組
  上野 由恵(フルート)(洗足学園音大講師)
  荒 絵理子(オーボエ)(東京交響楽団首席)
  金子 平(クラリネット)(読響首席)
  福士 マリ子(ファゴット)(東京交響楽団首席)
  福川 伸陽(ホルン)(NHK交響楽団首席)
  三浦 友理枝(ピアノ)
  録音 2015年7月28〜30日
   神奈川県、相模湖交流センター

 フランシス・プーランク(1899〜1963)のピアノと木管五重奏のための六重奏曲は1932年書かれています。3つの楽章からなり第1章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ディヴェルティスマン〜アンダンティーノ」、第3楽章「フィナーレ〜プレスティッシモ」となっています。第1楽章冒頭の響きは華やかなりしパリの雰囲気を感じさせるものです。フルート、オーボエ、クラリネットの明るさとホルンの良い響きがかつてのフランスの演奏を感じさせます。ファゴットはバソンのようなビヴラートをかけてくれるのでたまりません。また福川のホルンの魅力は本来のフレンチホルンの響きを探究していることでしょう。室内楽だけに自分をアピールできるところもよいところです。この第1楽章は改めてこの作品の楽しさを教えてくれました。第2楽章はディヴェルティスマン(ディヴェルティメント)となっていて遊び心もあるのでしょう。アンダンティーノとなっていますが、速いテンポになったりで忙しいです。管楽器のうまさが冴えます。第3楽章「フィナーレ」は速いテンポの難曲です。緊張感高まる演奏ですが互いの音を密に合わせてよい響きになっています。ここもホルンのうまさに脱帽です。コーダは穏やかなテンポになります
 アルベール・ルーセル(1869〜1937)の「ディヴェルティスマン」はテンポの変化があるロンドのようになっています。フルートのメロディに続くオーボエなど大変魅力的な作品です。
 クロード・ドビュッシー(1862〜1918)の「牧神の午後への前奏曲」は寺嶋陸也による編曲です。有名なオーケストラ作品でフルートのソロが聞きどころです。ホルンの応答も美しくここはホルンの聞かせどころです。フルートのソロはオーケストラ作品とほぼ同じですがオーボエとの絡みなどはオーケストラよりも生々しく聞こえます。ピアニスト寺嶋陸也の編曲は弦楽をほとんどピアノでカバーしているようでハープもピアノですが、無理に管楽器のパートをいじらないところが素晴らしいところです。全曲申し分ない演奏です。
 ポール・デュカス(1865〜1935)の交響詩「魔法使いの弟子」は浦壁信二の編曲です。オーケストラの作品をピアノと木管五重奏で演奏するという冒険ですが、これは面白いです。金管がホルンだけですからあらゆる楽器でカバーしています。ファゴットの主題はさすがに素晴らしい。スケルツォの緊張感もまた凄いです。フルートはピッコロに持ち替えていますので華やかです。ホルンはミュート片手に忙しいです。スケルツォ主題の再現も見事です。これはたまらないです。興奮のるつぼです。
 ジャン・フランセ(1912〜1997)の「恋人たちのたそがれ(恋人たちの時間)は3つの楽章で構成されています。第1曲「洒落た老人(年老いた恋人)」は木管のポルタメントが可愛いです。第2曲「ピンナップ・ガールズ」はクラリネットのソロがチャーミングです。第3曲「神経質な子供」は速いテンポの小品で物語を感じさせます。
 モーリス・ラヴェル(1875〜1937)の「亡き王女のためのパヴァーヌ」はピアノ曲からラヴェルがオーケストレーションしたものですが、ここでは磯部周平の編曲です。冒頭のホルン・ソロが聞きどころです。フルート、オーボエ、ファゴットなど木管の部分はラヴェルに準じたものです。弦楽の部分はピアノで静かに流れます。ハープの響きもピアノがありますので効果的です。いろいろなアレンジで聴きますが、この演奏は実にいいです。ホルンが素晴らしい。
 同じラヴェルの「ボレロ」は2つのメロディの繰り返し、しかも最弱奏から最強奏までもっていく難しさがあります。また楽器が多数使われますのでどの楽器を使うのかが注目すべきところです。クラリネットはエスクラ持ち替えでしょう。オーボエダモーレも持ち替えです。ソプラノサックスをオーボエでそれらしく吹くのも聞きもの。ホルンとピッコロとチェレスタの部分は何だろうという絶妙な響きです。まさか福川がトロンボーンを吹くとは思いませんでしたが、これが素晴らしい。すぐにホルンに持ち替えていますから神業です。コーダの演奏は6人の力演です。ここでピアノの役割の大きさを感じます。プログラム最後にして大きな感動を呼ぶ名演奏です。絶賛します。


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