福川 伸陽

ラプソディ・イン・ホルン弐
CD(KING RECORDS KICC1065-6)2枚組

CD1温故〜ホルンで綴る日本の古き良き名曲集
 1.冨田勲/新日本紀行〜オープニング・テーマ
 2.外山雄三/ホルンとピアノのためのラプソディ
    「管弦楽のためのラプソディ」による
 3.林千尋編/思い出の四季 
    花/からたちの花/さとうきび畑
   夏の思い出/小さい秋見つけた/月の砂漠
   雪の降る街を/早春賦
 4.日本古謡/さくらさくら(山本昭一編)
 5.成田為三/浜辺の歌(外山雄三編)
 6.杉山長谷夫/出船(外山雄三編)
 7.多 忠亮/宵待草(外山雄三編)
 8.橋本国彦/母の歌(外山雄三編)
 9.近衛秀麿/ちんちん千鳥(外山雄三編)
10.草川 信/夕焼け小焼け(外山雄三編)
11.山田耕筰/赤とんぼ(外山雄三編)
12.日本古謡/ずいずいずっころばし(柏原賢編)
           (ホルン四重奏)
13.瀧廉太郎/荒城の月 (ホルン・ソロ)
14.源田俊一郎編/ふるさとの四季
         (ホルン四重奏&ピアノ版)
    故郷/春の小川/朧月夜/鯉のぼり/茶摘み
   夏は来ぬ/われは海の子/村祭り/紅葉
   冬景色/雪/故郷
15.宮城道雄/春の海(轟 千尋編)

CD2知新〜ホルンのために生まれた
           日本人作曲家の新しい声
16.池辺晋一郎/ホルンは怒り、しかし歌う 
              (ホルン・ソロ) 
17.藤倉 大/ぽよぽよ (ホルン・ソロ) 
18.細川俊夫/小さな花
  〜ミヒャエル・ヘフリガーの50歳の誕生日に
                 (ホルン・ソロ) 
19.吉松 隆/スパイラルバード組曲Op111

  福川 伸陽(ホルン)
  三浦友理枝(ピアノ)
  日高 剛(ホルン)(12&14)
  勝俣 泰(ホルン)(12&14)
  石山直城(ホルン)(12&14)
  録音 2013年1月16〜18日
    稲城市立iプラザホール

 福川伸陽2枚目のアルバムはすべて日本の歌や日本の作曲家による作品です。冒頭の「新日本紀行」は年配の世代には思い出深い番組でテーマ音楽は耳に残っています。外山雄三の「管弦楽のためのラプソディ」は日本民謡を採り入れた作品で和太鼓などの和楽器を使った日本の音楽を世界に披露した名曲です。それを外山雄三自身によるホルンとピアノのための編曲が演奏されています。冒頭で打楽器を演奏しているのは福川とピアノの三浦だそうです。最後の八木節は爽快です。
  林千尋編曲による「思い出の四季」は季節の歌をメドレーにしたものです。その中に「ざわわ、ざわわ」の「さとうきび畑」が入っているのは嬉しいものです。名ホルン奏者山本昭一編曲による「さくらさくら」を録音してくれたことは感謝でしょう。
  「浜辺の歌」「出船」「宵待草」「夕焼け小焼け」「赤とんぼ」の5曲は外山雄三編曲で千葉馨先生の録音があります。福川の録音でも聞けるのはこれも嬉しい限り。「母の歌」と「ちんちん千鳥」も外山雄三の編曲で今でこそほとんど聞かれない歌ですので懐かしいでしょう。楽譜は千葉先生からいただいたそうです。
  「ずいずいずっころばし」はN響メンバーとの共演で息のピッタリ合った名演です。多彩な音色を使ったスピード感豊かな演奏は抜群。
  「荒城の月」はホルン・ソロで哀愁的な響きを表現しています。「ふるさとの四季」はピアノ伴奏付のホルン四重奏という珍しい組み合わせですがなるほどピアノ伴奏があったほうが生き生きしています。
  「春の海」は尺八と琴のための作品でヴァイオリンやフルートで演奏されることもありますが、ホルンで吹くのは聞いたことがありません。尺八の首振りを表現したところは素晴らしい。新しいレパートリーになるかもしれません。
  CD2のプログラム4曲はすべて世界初録音です。日本の作曲家による無伴奏ホルンのための作品を取り上げた意欲的なアルバムです。福川の優れた演奏によって歌われる池辺晋一郎の「ホルンは怒り、しかし歌う」は圧巻です。これほどの素晴らしい作品を吹けるということは幸せでしょう。
  藤倉 大の「ぽよぽよ」は赤ちゃんのほっぺを表現したそうですが、演奏はワウワウミュートを使う面白いものです。演奏は困難を極めるものでしょう。
  細川俊夫の「小さな花」も無伴奏ホルン作品です。これは蓮の花の開花をイメージしたものだそうです。初演はシュテファン・ドールが2011年に日本初演は福川が2012年に行いました。スローテンポのつぼみの表現から開花した花の華麗なイメージを表現した部分の鮮やかな演奏が聞きもの。
  吉松 隆の「スパイラルバード組曲」は福川の委嘱作品で鳥の歌の組曲、こちらはホルンとピアノのための作品です。第1曲「鳥の螺旋。渦巻き鳥の登場」第2曲「クールな鳥のステップと舞踏」、第3曲「ロマンス。渦巻き形の夢の歌」、第4曲「狂気の鳥。カデンツァ付き」、第5曲「終曲あるいは螺旋の旅の終わり」の5曲からなる組曲です。第1曲、第2曲の多彩な表現は素晴らしく、福川の技量の豊かさが際立っています。第2曲ではピアノの不協和音も凄い。第3曲の「ロマンス」ではミュートを使っています。ピアノの響きがきれいです。 第4曲「狂気の鳥」は難曲です。第5曲では第1曲で使われたフレーズが再度現れます。それにしても名曲名演の誕生です。
  この2枚組アルバムは古き良き時代の名曲と21世紀の作品を聞ける素晴らしいものです。絶賛したいと思います。 


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