福川 伸陽

ラプソディ・イン・ホルン
CD(KING KICC-882)

ラプソディ・イン・ホルン
1.「アルプスの少女ハイジ」オープニング・テーマ
2.ガーシュイン/ラプソディ・イン・ブルー
3.サン=サーンス/ロマンスOp36
4.グリエール/ノクターンOp35−10
5.ロッシーニ/前奏曲、主題と変奏
6.バーンスタイン/トゥナイト
7.モリコーネ/ニュー・シネマ・パラダイス
8.デュカス/ヴィラネル
9.ピアソラ/リベル・タンゴ
10.チック・コリア/スペイン
11.マーキュリー/ボヘミアン・ラプソディ
12.マラン・マレ/ル・バスク
   福川伸陽編曲(2)
   轟 千尋編曲(1、6、7、9〜11)

  福川 伸陽(ホルン)
  大堀晴津子(ピアノ)
  録音 2010年7月8&9日
      東京 HAKUJU HALL

 日本フィルの首席福川伸陽の初アルバムです。2008年の日本音楽コンクールで第1位受賞して2年、待望のソロアルバムはホルンでは初めての「ラプソディ・イン・ブルー」をメインとした意欲に満ちたものになりました。クラシックだけでなくタンゴ、映画音楽からチック・コリアのジャズ作品まで多彩なプログラムになっています。
 第1曲「アルプスの少女ハイジ」のオープニングテーマはホルンで吹いてみたい曲でしょうね。これは多重録音で伴奏まで吹いています。第2曲ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」はホルンで吹くにはあまりな冒険ですが、ドクシツェルのトランペット版とは違ってホルンの表現力を最大に生かした編曲です。ここまでやるかの演奏は何度も聴いてみたくなります。ワンワン・ミュートがうまい。
 第3曲サン=サーンスのロマンスはあまい響きのホルンがきれいです。中間部では強弱を生かしたメリハリのある演奏です。第4曲グリエールのノクターンはロマン的な作品です。ホルンだけでなくピアノパートもきれいです。小品ながらも雄大さを感じさせる演奏です。
 第5曲ロッシーニの「前奏曲、主題と変奏」の演奏は注目でしょう。時折即興を加えていますので、聞き慣れた演奏とはひと味違います。オペラ作曲家ロッシーニの作品ということを改めて教えてくれる名演です。かつてここまで面白く演奏したホルン奏者はいないでしょう。ピアノ伴奏がまたにくいです。
 第6曲「トゥナイト」はバーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」の最大のヒット曲です。ホルンで吹くとは贅沢です。第7曲エンニオ・モリコーネの映画音楽「ニュー・シネマ・パラダイス」は1989年のイタリア映画です。哀愁的なホルンはたまりません。
 第8曲「ヴィラネル」はホルン作品の定番ながらも難曲です。福川はホールの響きを最大に生かした演奏、録音でこの曲の魅力をも感じさせてくれます。ヴィラネルに新たな名演が誕生といえるでしょう。
 第9曲ピアソラの「リベル・タンゴ」はヨーヨー・マのチェロで一躍有名になったタンゴ曲です。ホルンで吹いても不思議はないでしょう。第10曲チック・コリア(ジャズ・ピアニスト)のスペインは1972年の作品でロドリーゴのアランフェス協奏曲の第2楽章の主題で始まり、途中からアップテンポのジャズになります。福川のホルンが素晴らしい。また冒頭はイングリッシュホルンかなと思うほどきれいでした。第11曲はイギリスのロックバンド、クイーンの作品「ボヘミアン・ラプソディ」です。ホルン吹くのは難しいところも多重録音でカバーしています。約6分の長い曲です。
 最後を飾る第12曲「ル・バスク」はまさにアンコールとして吹かれたようです。ブレイン同様リピート無しで一気に吹いています。後半はテンポアップで見事に吹いています。最後はグリッサンドで終わっています。そしてこの曲だけライヴ風に拍手が入っています。


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