ペーター・ダム

R・シュトラウス/ホルン協奏曲第1番、第2番(1975)
CD(EMI CMS764342 2)3枚組

ケンペ/R・シュトラウス/管弦楽&協奏作品集
CD1
1.ホルン協奏曲第1番変ホ長調Op11
2.ホルン協奏曲第2番変ホ長調
3.オーボエ協奏曲ニ長調
4.二重小協奏曲(クラリネットとファゴットの為の)
CD2
5.ブルレスケ(ピアノと管弦楽の為の)
6.家庭交響曲への付随小品(左手のピアノの為の)
7.アテネの大祭Op74(左手のピアノの為の)
CD3
8.交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの
       愉快ないたずら」Op28
9.交響詩「ドン・ファン」Op20
10.交響詩「英雄の生涯」Op40

  ペーター・ダム(ホルン)(1&2)
  マンフレート・クレメント(オーボエ)(3)
  マンフレート・ヴァイゼ(クラリネット)(4)
  ウォルフガング・リープシャー(ファゴット)(4)
  マルコム・フレージャー(ピアノ)(5)
  ペーター・レーゼル(ピアノ)(6&7)
  ルドルフ・ケンペ指揮
    ドレスデン・シュターツカペレ
  録音 1975年9月1日〜9日(1〜5)
      1976年1月29日〜31日(6&7)
      1970年6月(8&9)
      1972年3月(10)

 ケンぺのR・シュトラウス/管弦楽曲集と協奏曲集の中からの抜粋です。
 2つのホルン協奏曲はペーター・ダムが演奏しています。1970年の録音のときよりもテンポは遅めで余裕のある演奏をしています。音色のきれいなことは変わりません。第1番は冒頭から驚きの明るい響きのホルンが聞かれます。第3楽章は力むことなく美しい響きを保ちながら流麗な演奏をしています。カデンツァの朗々とした演奏は見事なものです。
 ホルン協奏曲第2番は冒頭のソロが流れるように演奏され、この底抜けに明るい響きは他にないものです。ダムの演奏は強奏の部分でも力むことなくホルンの響きを大切にしています。第3楽章はホルンもさることながらケンペの作り出すオーケストラの響きの美しさにも注目です。
 オーボエ協奏曲はシュトラウス晩年の作品でオーボエの美しさと豊かな表現力をしめしてくれます。なおソロを吹くマンフレート・クレメントはこのときはバイエルン国立歌劇場の首席奏者で、1980年秋からバイエルン放送交響楽団の首席になっていました。その美しいオーボエはオーケストラのチューニングでのA音を吹いただけでも感動したそうです。
 クラリネットとファゴットのためのデュエット・コンチェルティーノはクラリネットとファゴットがソロ楽器という珍しい協奏曲です。クラリネットとファゴットの対話で3つの楽章が続けて演奏されます。第1楽章はクラリネットが主役、第2楽章はファゴットが主役、第3楽章は2つの楽器がからむ協奏曲です。美女と野獣の対話のようです。
 ブルレスケはニ短調のピアノ協奏曲といってもよい作品です。単一楽章でこっけいな音楽という意味ながらとても楽しい感じの作品です。フレージャーのピアノは抜群です。
 「家庭交響曲への付随小品Op73」と「アテネの大祭Op74」は左手のピアノの為の作品です。この2つの曲はラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」と同様に、オーストリアのヴィットゲンシュタインのために作曲されたものです。ヴィットゲンシュタインは第一次大戦で右手を失い、それでも演奏活動を続けようと新しい曲を何人かの作曲家に作曲を依頼していました。左手のピアノのための作品として重要な作品です。中でも「アテネの大祭」はよくできており左手だけとは思えない高い完成度の作品です。
 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」はリヒャルト・シュトラウスの交響詩の中でも人気の高い傑作です。ホルンがティルの主題を吹きます。このホルンを吹いているのが1969年に首席になったばかりのペーター・ダムです。ケンペがダムのホルンを喜んで起用して録音したことが伺えます。
 交響詩「ドン・ファン」はスピード感あふれる演奏です。オーケストラの技量の高さが伺えます。交響詩「英雄の生涯」はシュトラウス最後の交響詩でシュトラウス自身の生涯を描いたともいわれている作品です。「英雄の伴侶」でヴァイオリンのソロが現れますがこのソロは表現が難しいそうです。ケンペは理想的な響きをドレスデンから引き出しています。


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