エティエンヌ・クタジャル

MDINA/ホルンのための作品集
CD(divine art dda25189)

MDINA/ホルンのための作品集
1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタ ヘ長調Op17
2.ヴィトマン/ホルンのためのアリア
3.R.シュトラウス/アンダンテ
4.グリシテ/イムディーナ
5.ホリガー/激情−夢
6.ブラームス/ホルン三重奏曲変ホ長調Op40

 エティエンヌ・クタジャル(ホルン)
 カルミーネ・ラウリ(ヴァイオリン)(6)
 ジョン・ライド(ピアノ)(1、3&6)
 録音 2017年6月2〜4日

 エティエンヌ・クタジャル(1983〜)はマルタ出身のホルン奏者です。無伴奏ホルンの作品と室内楽作品を録音しています。
 ベートーヴェン(1770〜1827)の「ホルン・ソナタ」はホルン作品の定番曲です。クタジャルの演奏は厚みのある響きのホルンが魅力です。緊張感をもって第1楽章を演奏しています。第2楽章から第3楽章と流麗な演奏です。
 イェルク・ヴィトマン(1973〜)の「ホルンのためのアリア」は無伴奏ホルンのために書かれています。冒頭は静かに始まります。自然倍音を使うところが特徴です。ゲシュトップも使いますのでナチュラルホルンでもいいかもしれません。作品としては前半の穏やかな部分と後半の激しい動きの部分があって演奏は困難を極めます。後半には多彩な技巧を使います。独奏ホルン作品としては魅力的です。9分30秒を超える大作です。
 リヒャルト・.シュトラウス(1864〜1949)の「アンダンテ」は24歳のときの作品です。ホルン協奏曲とはまた違う魅力があります。クタジャルのホルンは抒情的で美しい音楽になっています。
 ジェスモンド・グリシテ(1969〜)の「イムディーナ」とはマルタ島の町名です。この作品は無伴奏ホルンで演奏されます。冒頭、グリッサンドの連続、フラッター・タンギングと多彩なテクニックを要する難曲です。後半にもグリッサンドの連続があります。自由な形式の作品です。
 ハインツ・ホリガー(1939〜)の「激情−夢」は2001年の作で2004年に改訂されオリヴィエ・ダルブレが初演しています。ホルンで激しい感情、怒りを表現するというのは難しいことですが、まさにイライラ状態を音にしたこの作品は凄いです。クタジャルの演奏もまた見事なものです。「夢」のような部分では途中で一声「ヨー」と入るのは面白いです。全曲にわたり多彩なテクニックを要求され重音奏法も使う難曲です。
 ブラームス(1833〜1897)の「ホルン三重奏曲」はホルンが全面に出ている演奏です。ヴァイオリンの響きも良いものでピアノはそれほど強くは響かせないのでホルンの引き立て役になっています。第1楽章のホルンは良い響きでホルン・トリオらしくホルンが目立つ演奏です。クタジャルのホルンは厚みがあって良い響きです。第2楽章のスケルツォはピアノ、ヴァイオリンとホルンが明るく歌います。ピアノのきらめきがききものです。トリオのホルンとヴァイオリンがよい響きで、ピアノもまたきれいです。第3楽章のアダージョ・メストはピアノの前奏があって哀愁的な主題が歌われます。ホルンとヴァイオリンの調和のとれた響きがきれいです。第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」はホルンの活躍がめざましいです。厚い響きの演奏には圧倒されます。ヴァイオリンとピアノも良い響きでフィナーレの響きが厚いものになっています。
 このアルバムは多彩なプログラムで聴きごたえがあります。


トップへ
戻る
前へ