シュテファン・ドール

細川俊夫/ホルン協奏曲「開花の時」
CD(NAXOS 8.573239J)

 細川俊夫/管弦楽作品集 第1集 
 1.ホルン協奏曲「開花の時」(2010)
 2.ピアノ協奏曲「月夜の蓮」(2006)
 3.チェロと管弦楽のための「チャント」(2009)

  シュテファン・ドール(ホルン)(1)
  児玉 桃(ピアノ)(2)
  アンッシ・カルットゥネン(チェロ)(3)
  準・メルクル指揮
  ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
  録音 2013年6月10&11日

  細川俊夫(1955〜)は現代日本の作曲家で世界的に注目されています。この3つの作品は自然と人間の関わりをモチーフにしたユニークともいえる作品です。
  ホルン協奏曲はシュテファン・ドールによって初演され彼に献呈されています。この作品はホルン協奏曲というよりはホルンをソロ楽器にしたオーケストラ作品というほうが良いかもしれません。最弱奏ではじまるこの作品は音が出ているのかなと思うほど小さい音が2分近く続きやっと2本のホルンと共にソロホルンが現れます。2本のホルンは客席にあるそうで生演奏は凄いことでしょう。4分ほどから音楽が大きくなってきます。「開花の時」という標題を考えますと夜明けの静寂から始まり日を浴びたつぼみが時間と共に静かに静かにそして力強く花を咲かせていく様子を時間短縮で見ているような感じです。花には花びらとめしべ、おしべがあっておしべに光があたり輝く色を管楽器がきらびやかに演奏していくようなクライマックスが凄いです。ホルンは長い長い主題、トリル、そして高い音などが響きます。また太陽の輝き、花が空へ向かうようなフレーズなど印象的な部分が続きます。終結は静寂で終わります。
  ピアノとオーケストラのための「月夜の蓮」はピアノ協奏曲として書かれています。北ドイツ放送の委嘱作品でモーツァルト生誕250年記念に書かれています。初演は児玉桃で彼女に献呈されています。この作品はモーツァルトのピアノ協奏曲第23番イ長調K.488の第2楽章をテーマにしていて楽器編成もモーツァルトと同じですが、聞こえてくる音楽は細川の作品です。蓮の花はつぼみが合掌する手の形に似ていて祈りの象徴でもあります。この花が咲くところは感動があります。そして安らぎを感じるものです。このピアノ協奏曲は月光を浴びた蓮の花をイメージしたものでピアノは蓮を表し偉大な音楽になっています。
  チェロと管弦楽のための「チャント」は仏教の典礼音楽に影響を受けたそうで、チェロの弾き方には琵琶の弾き方を模倣したような響きがあります。チェロの表現力はここまでできるのかと思える作品です。ピツィカートも強く弾けばバチバチ響くのでその音には惹きこまれます。この作品にも歌と祈りがあります。


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