阿部 雅人

阿部雅人ホルン・リサイタル
CD(自主制作)

阿部雅人ホルン・リサイタル
1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタ ヘ長調Op17
2.ボザ/森にてOp40
3.ヒンデミット/ホルン・ソナタ ヘ長調(1939)
4.ノイリンク/バガテル〜低音ホルンのための
5.R・シュトラウス/ホルン協奏曲第2番変ホ長調
  阿部 雅人(ホルン)
  遠藤 直子(ピアノ)
  録音 2009年5月8日
  すみだトリフォニー 小ホール・ライヴ

 阿部雅人は新日本フィルハーモニーのホルン奏者でいわゆる下吹きです。安定した低音を吹くスペシャリストとして知られています。
 ベートーヴェンのソナタはアレキサンダーを自在に操作、緩急、強弱を巧みにつけた素晴らしい演奏です。タンギング、スラー、レガートは舌をまくうまさがあります。第1楽章は数ある録音の中にあって聴く者をうならせる音楽を奏でています。このソナタは低音を使いますので深みのある低音は抜群です。第3楽章の流麗な演奏、高音から低音まで安定した音色は素晴らしい。
 ボザの「森にて」はデュカスの「ヴィラネル」同様パリ音楽院の卒業試験の課題曲として作曲されています。巧みな技法と低音から高音まで安定した演奏を要求されます。低音がよく響く阿部の演奏は聞きたい音がよく聞こえてくる名演です。下吹きならではの選曲でしょう。
 ヒンデミットのホルン・ソナタ(1939)は難曲で、ヘ調とはいえ無調性のように半音をやたら使いますが、阿部の演奏は実に素晴らしく、なめらかできれいな演奏です。新たな名演といえましょう。第3楽章のffは深みがあり見事な響きです。
 ノイリンクの「バガテル」は低音ホルンのための作品で、ソリストたちのリサイタルのプログラムには載る事のない曲です。下吹きホルンのオーディションに使われるそうで、なるほど低音の厚みが要求される難曲です。阿部の演奏は文句なしの演奏です。最後の低音は圧巻。
 R・シュトラウスのホルン協奏曲第2番はピアノ伴奏によりますので、ホルン・ソロはくっきり浮き立つものですからメリハリのつけ方がよくわかってきます。強弱、レガート、スラーと安定した演奏が求められますが、阿部の演奏は文句なしの名演です。第3楽章では下降音で低音を吹きますのでそこは聴きものです。強弱、クレッシェンドは素晴らしく脱帽しきりです。


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