阿部 雅人

スパイラル/東京ホルンクラブ
CD(FIREBIRD KICC206)

スパイラル
1.池辺晋一郎/スパイラル
2.ワーグナー/歌劇「タンホイザー」より
    巡礼の合唱と狩の音楽(ダム編)
3.外山雄三/「なつかしい昔」(パッサ・テンポ)
4.ヴィヴァルディ/調和の霊感Op3−7(長岡慎編)
5.石井眞木/ホルン・ラプソディーOp83
   池辺晋一郎指揮(1)
   長岡 慎指揮(2〜4)
   石井眞木指揮(5)
   東京ホルンクラブ
   千葉 馨、阿部雅人、有馬純晴、井手詩朗、
   上原 宏、沖田晏宏、木村 淳、世川 望、
   竹村淳司、丸山 勉、森山光三、山本 真、
   吉永雅人、脇屋俊介、和田博史、長岡 慎
     録音 1996年8月13&14日

 千葉馨先生が中心となって1973年に結成された東京ホルンクラブの演奏は、やはり日本のホルンアンサンブルの本家でしょう。結成当時日本にホルンアンサンブルがなかったので最初は楽譜もなかったそうです。演奏曲の中で池辺晋一郎、外山雄三、石井眞木の3曲は委嘱作品です。
  池辺晋一郎の「スパイラル」は9本のホルンのための作品です。ステージでも9人のホルン奏者が渦巻き状に並ぶという異色の作品で、これは素晴らしい演奏を繰り広げています。これぞ東京ホルンクラブの実力を発揮した演奏といえます。現在唯一の録音。
  ワーグナーの歌劇「タンホイザー」からの「巡礼の合唱と狩の音楽」はペーター・ダムが10本のホルンのために編曲したものでホルンの活躍するワーグナー作品でもなじみの深い作品です。中でもタンホイザー序曲の冒頭から響く巡礼の合唱はホルン・アンサンブルの醍醐味でしょう。
  外山雄三の「なつかしい昔」は1989年の作曲でこれも委嘱作品。6本のホルンのための作品で7つの楽章からなります。
  ヴィヴァルディの調和の霊感第7番へ長調はメンバーの長岡慎による8本のホルンのための編曲です。原曲は4つのヴァイオリンのための協奏曲です。アンサンブルの美しさがあります。
  石井眞木の「ホルン・ラプソディー」は委嘱作品で、1989年の初演のときは題名が「角笛の遠音」でしたがこの録音にあたって1996年に改作して「ホルン・ラプソディー」になりました。角笛や、動物の鳴き声、日本古来のほら貝のような響きなどかなり難しいテクニックを要求しています。聞いていると突然ベートーヴェンの「運命」第1楽章のフレーズが聞こえてびっくりです。
  東京ホルンクラブから独立したり、また他のアンサンブルに参加している奏者も多いですが、この本家の演奏はまさに頂上にあるといえるでしょう。


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