オリヴィエ・ダルベレイ

グスタフ・イェナー/ピアノ、クラリネットとホルンのための三重奏曲
CD(cpo 999 699-2)2枚組

グスタフ・イェナー/室内楽作品全集
CD1
1.ピアノ四重奏曲ヘ長調
2.弦楽四重奏曲第3番ヘ長調
CD2
3.弦楽四重奏曲第2番ト長調
4.弦楽四重奏曲第1番ヘ長調
5.ピアノ、クラリネットとホルンのための
             三重奏曲変ホ長調

モーツァルト・ピアノ四重奏団と仲間たち
ナタリー・チー(ヴァイオリン)(1〜4)
ハルトムート・ローデ(ヴィオラ)(1〜4)
ペーター・ヘール(チェロ)(1〜4)
タマーラ・シスロフスカ(ピアノ)(1&5)
ヴォルフラム・ブランドル(第2ヴァイオリン)(2〜4)
ヴォルフハルト・ペンツ(クラリネット)(5)
オリヴィエ・ダルベレイ(ホルン)(5)
録音 1999年12月13〜15日(1&5)
    2000年7月17日(2)
    2001年5月8〜10日(2〜4)
    ハンス・ロスバウト・スタジオ

 モーツァルト・ピアノ四重奏団と仲間たちによるグスタフ・イェナーの室内楽作品全集です。ホルンはスイスのダルベレイが参加しています。グスタフ・イェナー(1865〜1920)はドイツの作曲家。ブラームスの弟子として学んでいましたので、作風はブラームスの影響を受けてロマンティックです。
 「ピアノ四重奏曲ヘ長調」はモーツァルト・ピアノ四重奏団の演奏です。1905年に書かれていて、4つの楽章で構成されています。第1楽章「アレグロ」はピアノと弦楽のための協奏曲のように聞こえます。ヴァイオリンのソロもきれいです。またピアノの存在感は大きくて圧倒的な響きです。ロマン派作品としても素晴らしい響きです、シューマンにも迫る名作です。第2楽章「アダージョ」は弦楽が厳かに歌いだします。そしてピアノが優しく入ります。このアダージョはチェロも圧倒的な響きを出しています。ヴァイオリンのソロも美しい響きで、大変美しいアダージョです。第3楽章「スケルツォ、アレグロ」はスケルツォの気迫に満ちた演奏があります。ピアノの力強い響きと弦楽の緻密な演奏、これが素晴らしいです。第4楽章「ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ」はピアノと弦楽がよいアンサンブルです。イェナーの傑作とも言えそうな素晴らしい作品です。演奏も素晴らしいものです。ピアノ四重奏の醍醐味を味わうことができました。
 「弦楽四重奏曲第3番ヘ長調」は1911年に書かれて、4つの楽章で構成されています。第1楽章「アレグロ・アマビーレ」はさわやかに始まり、やがて細やかなフレーズが響きます。そして勢いのある演奏が始まります。弦楽四重奏作品としても聴く喜びを感じます。第2楽章「主題と変奏、アダージョ」はアダージョに始まり、主題が歌われて、変奏曲になります。最後は穏やかに終わります。第3楽章「アレグロ・アパッショナート」は情熱的な演奏です。いかにもそのように厚みのある演奏です。ユニゾーンも含む響きの良さは抜群です。第4楽章「ヴィヴァーチェ」は速いテンポで勢いのある演奏です。特徴あるフレーズをユニゾーンで演奏しますので厚い響きになります。聞くたびに名曲だと思います。このイェナーの作品はもっと多くの演奏があっていいと思います。
 「弦楽四重奏曲第2番ト長調」は1910年の作品、4つの楽章で構成されています。第1楽章「アレグロ・アッサイ」は短い楽章ですが、さわやかな響きに始まります。上昇フレーズがきれいな響きの演奏です。第2楽章「アレグロ・エネルジコ」は第1楽章と同じようなテンポです。展開部といっても良いような雰囲気です。第3楽章「モルト・アダージョ〜プレスト」は冒頭の短い緩徐楽章部分と速いプレスト部分があります。プレストの演奏には勢いがあります。第4楽章「アレグロ・ジョコーソ」は快適なフィナーレ、楽しそうな演奏です。ロマン派作品らしい美しさがあります。
 「弦楽四重奏曲第1番ヘ長調」は1907年の作品。4つの楽章で構成されています。第1楽章「アレグロ」は冒頭から物語風の音楽が流れてきます。途中から細やかなフレーズが続きます。この楽章もロマンティックです。第2楽章「アンダンテ・エスプレシーヴォ」は穏やかに始まり、弦楽四重奏の美しさがあります。ヴァイオリンの美しい主題もあってこの楽章は癒されます。第3楽章「アレグレット・グラチオーソ」はスケルツォ風の三拍子です。踊りたくなるような良いテンポで、勢いがあります。第4楽章「アレグロ」は力強く始まる序奏、そして細やかなフレーズと流麗なフレーズがあります。このフィナーレもロマンティックです。良い作品です。
 「クラリネット、ホルンとピアノのための三重奏曲」は1900年の作品。クラリネットとホルンのデュオといってもよい作品です。4つの楽章で構成されています。第1楽章「モデラート」はホルンで始まってクラリネットがすぐ応答するという物語風なところはロマン派作品のようです。ホルンの美しい響きと美しい主題は素晴らしいものです。クラリネットも良い響きです。この感動的な演奏はこの作品の素晴らしさを教えてくれます。ダルベレイのホルンが美しいです。第2楽章「アダージョ」はピアノに始まり、クラリネットが歌い、ホルンが応答していきます。この楽章はピアノとクラリネットが主役のようにも聞こえますが、ホルンとのトリオに変わりはありません。ダルベレイのホルンが大変素晴らしい響きで、癒されます。この楽章はブラームスに迫る名作です。第3楽章「プレスト」はクラリネット、ホルンとピアノが快活なスケルツォを演奏しているように聞こえます。ここではクラリネットが明るく動き回ります。ホルンも素晴らしいテクニックで主題を演奏しています。ダルベレイのホルンは大変素晴らしい響きで、ホルン協奏曲を聴いているかのようです。第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」はピアノの重厚な響きで始まります。そこにクラリネットとホルンが絡んでいきます。この楽章はイェナー独特とも思える作風です。それにしても実に素晴らしい作品です。ホルンが力強く演奏するところも素晴らしい響きです。ブラームスのホルン三重奏曲やクラリネット三重奏曲と並ぶ名曲といってよいでしょう。もっと多くの録音があっていいと思います。ダルベレイによるホルン三重奏曲の名演奏です。


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