ジェフリー・ブライアント

ブリテン/セレナードOp31
CD(RPO CRCB−2003)

アシュケナージ/ライヴ・イン・モスコウ
1.ウォルトン/交響曲第2番
2.ブリテン/セレナードOp31
3.ナッセン/交響曲第3番Op18

  マーティン・ヒル(テノール)(2)
  ジェフリー・ブライアント(ホルン)(2)
  ウラディミール・アシュケナージ指揮
  ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
  録音 1989年11月11&12日ライヴ(1&3)
      1990年2月9日(2)

 このCDはアシュケナージ/ライヴ・イン・モスコウというタイトルで、アシュケナージが西側に亡命してから26年ぶりの1989年に祖国で演奏したライヴ録音です。ただし、これはウォルトンとナッセンだけで、ブリテンだけは翌年ロンドンのアビーロード・スタジオでの録音です。
 ウィリアム・ウォルトン(1902〜1983)はイギリスの作曲家、交響曲第2番は1960年の作品でこの年のエジンバラ音楽祭で初演されています。第1楽章:アレグロ・モルト、第2楽章:レント・アッサイ、第3楽章:パッサカリアの3つの楽章で構成されています。前衛音楽が華やかだった時代にこのいわば後期ロマン派的な作風は不評だったそうですが、改めて聞いてみますと不評の理由がわかならいほどよくできた作品です。気持ちよく聞くことができます。
 ブリテンのセレナードはヒルのテノールとブライアントのホルンがとても良い響きと歌唱を聴かせています。ブライアントは音色がタックウェルに似ています。強奏で音の割れ方も若い頃のタックウェルによく似ています。プロローグの滑らかなホルン、第2曲「パストラール」のテノールの歌唱とホルンのきれいな音色の対話が絶妙です。第3曲「ノクターン」の冒頭で響く弦楽の叫びに魂を与えるようなアシュケナージの指揮に注目でしょう。ホルンとテノールの歌とは全く対極といえる弦楽の響きはこの作品のもっとも聞き所といっても良いでしょう。ブライアントのホルンがまた素晴らしい響きになっています。第3曲「エレジー」はホルンによる半音階のロングトーンが特徴ですがブライアントのホルンはさすがに素晴らしいものです。ヒルの歌唱もまた感動的。第5曲「ジーグ」は力強い弦楽とテノールの絶唱、最後にホルンが強烈なグリッサンドを聞かせる緊張感豊かな小品。第6曲「賛歌」はロンド楽章のようにホルンが動きまわる演奏が難しいところです。弦楽がピツィカートで追いかけるようで、ある意味楽しいものがあります。ブライアントのホルンが素晴らしい。第7曲「ソネット」はテノールと弦楽だけのポエム。第8曲「エピローグ」は冒頭の「プロローグ」と同じ楽譜を遠くから響くように舞台裏から演奏しています。このセレナードはイギリス伝統の演奏に輝きを与えた名演奏です。
 オリヴァー・ナッセン(1952〜)はイギリスの作曲家でタックウェルのためにホルン協奏曲を作曲しています。交響曲第3番は1973〜1979にかけて作曲され1979年のプロムスでティルソン・トーマスの指揮で初演されています。単一楽章でやや難解な作品ですが響きの素晴らしさと迫力が伝わってきます。16分あまりの作品。


トップへ
戻る
次へ