アレック・フランク=ゲミル

ベートーヴェン/ホルン・ソナタ /デュカス/ヴィラネル、他
CD(BIS BIS-2228)

19世紀のホルン
1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタ ヘ長調 Op17
2.シューマン/アダージョとアレグロOp70
3.F・シュトラウス/夜想曲Op7
4.ロッシーニ/前奏曲、主題と変奏
5.サン=サーンス/ロマンス ホ長調Op67
6.グラズノフ/夢 Op24
7.デュカス/ヴィラネル
8.ヴィンター/ハンターズ・ムーン

 アレック・フランク=ゲミル(ナチュラルホルン)(1、4&5)
      〃        (ウィンナホルン)(2&3)
      〃        (ピストンホルン)(6〜8)
 アラスデア・ビートソン (19世紀ピアノ)(1〜8)
 録音 2016年1月

 この「19世紀のホルンとピアノのための音楽」は4種類のホルンと4種類のピアノを使用したユニークなアルバムです。アレック・フランク=ゲミルはイギリスのホルン奏者、ヒュー・シーナン、ラドヴァン・ヴラトコヴィチ、マリー=ルイズ・ノイネッカーに師事しており、スコットランド室内管弦楽団の首席ホルン奏者です。
 ベートーヴェンのホルン・ソナタは1800年頃に作られたラウーのナチュラルホルンを吹いています。自然倍音とハンドストップだけで音階を奏でる難しい楽器ですがフランク=ゲミルは実に見事な奏法で滑らかに演奏しています。時折即興を入れて意表を突きますがそれもまた良い解釈です。ストップ音は完全な閉止音で開放音との違いがはっきりして面白いです。なお、ピアノは1815年製のラグラッサを弾いています。
 シューマンのアダージョとアレグロは19世紀末に作られたウィンナホルンを使用しています。このホルンはF管シングルですから演奏が難しいのですがフランク=ゲミルは管ぺっきに吹きこなしています。アレグロのまろやかな響きは素晴らしい。なおピアノは1847年製のバプティスト・シュトライヒャーのピアノを使用しています。
 フランツ・シュトラウスの「夜想曲」も19世紀末に作られたウィンナホルンを使用しています。この作品をウィンナホルンで録音したのは初めてと思いますが、実に滑らかな演奏です。ピアノもシューマンと同様に1847年製のバプティスト・シュトライヒャーのピアノを使用しています。
 ロッシーニの「前奏曲、主題と変奏」は1823年製のラウーのナチュラルホルンを吹いています。このロッシーニの作品は1860年頃の作品でナチュラルホルンのための作品ではないと思われますが、ここでフランク=ゲミルは敢えてナチュラルホルンを吹いています。これがかえって哀愁的な響きを醸し出していてホルンの作品の魅力を引き出しています。後半の速いフレーズは現代ホルンでも難しいのにナチュラルホルンでふいてしまう、フランク=ゲミルは凄いです。なおピアノは1867年製のユリウス・ブリュートナーを使用しています。
 サン=サーンスの「ロマンス ホ長調Op67」でも1823年製のラウーのナチュラルホルンを吹いています。この作品は現代のホルンでも難しいのですがフランク=ゲミルは難なくナチュラルホルンで吹いています。開放音と閉止音の対比が聴きどころです。ピアノはここでも1867年製のユリウス・ブリュートナーを使用しています。
 グラズノフの「夢(夢想)」 Op24では20世紀初めに作られたヴィクトール=シャルル・マイヨンのピストンホルンを使用しています。このシングルホルンから実に良い響きを出しています。ピアノは1898年製のベヒシュタインを使用しています。
 デュカスの「ヴィラネル」も同じヴィクトール=シャルル・マイヨンのピストンホルンを使用しています。この作品は前半を自然倍音で演奏するようになっていますが、勿論自然倍音で演奏しています。お手のものでしょう。後半の演奏も見事なものです。ピアノは1898年製のベヒシュタインを使用しています。
 ギルヴァート・ヴィンターの「ハンターズ・ムーン(狩人の月)」だけは1942年の作品ですが、同じヴィクトール=シャルル・マイヨンのピストンホルンを使用しています。この作品はハンドストップの技法を使いますのでフランク=ゲミルはアルバムの最後に入れたのでしょう。大変魅力的な作品でイギリスのホルン奏者の愛奏曲になっています。ピアノは1898年製のベヒシュタインを使用しています。


トップへ
戻る
前へ
次へ